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第三勢力2

「あの無能王太子が…いや、ヨハンネス殿下が生きていたとは…」


 聖王国残党軍の仮本営となっているドゥナンの市庁舎、その会議室で貴族のひとりが呻くように言った。会議室の中には、聖王国残党軍の首脳たる地方貴族達が集まっている。だが、『無能王太子』と口を滑らせた男を咎めようとする者はいない。


「面倒な事になったな」


「うむ、今さら王太子殿下が生きていた所で、なあ…」


「むしろ余計なお荷物にすぎん…」


 今さら王太子が出てきた所で邪魔なだけ――それが貴族達の本音だ。


 聖王国残党軍としては、聖王国王家の血を引くヨハンネスが生きていた以上は彼をトップに据えなければならない。だが、到底ヨハンネスに聖王国残党軍を導くだけの実力があるとは思えなかった。


「…まあ、物は考えようだろう」


 貴族のひとりがやや声をひそめつつ発言した。


「別に本気であの王太子に従う必要はない。適当におだてて祭り上げておいて、実権は我々で握れば良いだけよ。『王太子殿下の手を煩わせるほどの事はありません、軍事や政治は我々にお任せを――』とな」


「無論、それも考えたが…王太子ヨハンネスを迎え入れたというだけで、我々はヒューゴやミュルグレスに敵視されるのではいか…?」


 ミュルグレスは聖都を攻略した際に王族のことごとくを処刑している。かの叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンスにとって聖王国王族の全てが抹殺の対象である事は明らかだ。そんな王族のひとりである王太子ヨハンネスを迎え入れれば、自分達にも敵意が及ぶのではないか――貴族達はそう考えた。だが、また別の貴族がニヤリと下卑た笑みを浮かべる。


「なあに、それならばあの王太子の首をミュルグレスに差し出せば良いだけよ。そうすれば、むしろ我々の心証は良くなるかもしれんぞ」

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