皇帝就任6
「ツバキ…みんな…」
エレオノールの表情に、一瞬安堵と喜びの色が現われる。しかし彼女はそれを押しとどめた。今はまだ…喜びに浸っている時ではない。
「…私はまだ、あなた達をどこにも導く事は出来ていない。けれど…次の戦いに勝利する事ができれば、住み良い平和な世界に導く事が出来るかもしれない。きっと、次が最後だ。そのために…どうか、力を貸して欲しい」
エレオノールのその言葉に一同は頷いた。未来のため、エレオノールのため、仲間のため…なんとしても次の戦いに勝利する。その想いはこの場の全員が共有する所だった。当然、それは椿も変わらない。いや…彼こそが人一倍その気持ちを強く持っていたかもしれない。だが、同時にこうも考えていた。
(次の相手は…間違いなく、今までで最も強い)
聖王国軍と帝国軍の大半を手中に収め、さらにミュルグレスやシャルンホストという一流の指揮官も揃っている。そしてその総帥たる、ヒューゴ・トラケウ。彼の持つスキル、限界突破とはおそらく『この世界の誰よりも高い能力を持つ』というもの。
ヴォルフラムやカムランよりも指揮能力と武勇に優れ、エステルやシャルンホスト以上の作戦立案能力を持ち、その政策能力ではエレオノールすら凌ぐ。この世界の誰にもヒューゴを上回る事は出来ないだろう。
(けど…僕なら。元はこの世界の人間じゃない…僕なら、きっと)
ヒューゴを倒す事が出来る。ただし、その場合は――自分自身の身も無事ではすまないかもしれないが。




