皇帝就任5
「改めて、私からこの場に集まったみんなに一言…いいだろうか」
エレオノールのその言葉に、一同は静まり返る。
「私がこうして皇帝という身に余る地位に就く事が出来たのは…全て、みんなが共に戦ってくれたおかげだ。私ひとりでは、到底この地位に就く事は不可能だった」
そう言って、この場に集まった面々のひとりひとりに視線を移すエレオノール。そして、その視線は最後に椿の所で止まる。
「本当に…ありがとう」
エレオノールは自らの胸に手を当てる騎士風の敬礼をして見せた。そ皇帝としてではなく…ひとりの人間としての心が込められた礼。それを受けつつ、椿はゆっくりと首を振る。
「ううん、それは僕達に言わせれば…逆だよ、エレナ」
「え…?」
「僕達は、エレナだからこそ付いてきたんだ。僕達こそ…エレナがいなかったら、ここまで来れなかったと思う」
「そうっすね!エレオノール隊長だからこそ、自分達は付いてきたんっす!」
「誠にその通りだと思います」
エマとホフマンが頷く。
「そうだな、俺は誰かに従うなんてのは大嫌いだが…それでも、仕えてもいいと思った隊長が2人いる。アンスバッハ隊長はその1人だ」
「気が合いますな、リヒター殿。私としても、心からお仕えしたいと思ったのは義兄上とアンスバッハ殿だけであります!」
「俺も、アンスバッハ殿が隊長じゃなけりゃあ聖王国軍に仕えようなんて思わなかったでしょうね」
そう言って、リヒターとボゥ、ズメイも同意した。
「うん、ボクも…その、この隊に入れて…良かったって、思ってる」
やや俯いて恥ずかしそうにしながら、ハティも賛同を示す。
「だから――こちらこそ、本当にありがとうエレナ。僕達をここまで導いてくれて」




