皇帝就任4
「そりゃあまあ、ホフマン殿の気持ちも分かるぜ。何しろ、一年ちょっとしか付き合いのない俺でもちょっと心に来るものがあるからな」
「へえ、リヒター部隊長でもそんな風に思う事があるたぁ驚きですな」
そんなズメイの言葉に対し、リヒターは肩をすくめて答える。
「なにしろ、周りから見りゃあ俺達は皇帝サマを支えてきた忠臣だ。この戦いが終わった後、働かずに暮らしたって誰も文句言わねえ立場になれるって訳だ。もしも俺に『働け!』って言ってくる奴がいたらこう言ってやるよ。『俺は命がけで皇帝陛下に尽くしてきたんだ。もう一生分働いたよ』ってな」
「はぁ…やっぱりお前はダメニンゲンだな」
ハティがリヒターを横目で見つつため息を吐いた。しかし、そんな彼女もエレオノールが皇帝に就任した事についてはどことなく嬉しそうだ。彼女にとって最も大切なもの、それは弟妹に他ならない。エレオノールが皇帝として世界を統治すれば、きっと弟妹にとって明るい未来が訪れる…そんな風に思っているのかもしれない。
「私も感無量であります!微力ながらアンスバッハ殿に尽くして来て本当に良かったと…心からそう思っています。しかし、カイ義兄上はここまで見越して私をアンスバッハ隊に入るよう勧めてくださっていたのですね…流石です」
ボゥは感激しやすいたちなのか、その目尻には涙が浮かんでいる。もっとも、カイがここまで見越してボゥをエレオノールの配下にするよう勧めたというのは完全な過大評価だったが。




