最後の敵16
「って訳で、私はエレオノールちゃんの皇帝就任こそが最善手だと思うんだけど…みんなはどう?」
「オレは賛成だ」
エステルの問いに対して真っ先に答えたのは意外にもカイだった。
「エレオノール・フォン・アンスバッハ…あんたは、オレが自分より上だと認めた数少ない人間だ。皇帝くらいなってもらって当然だ」
「その自信の根拠はどうかと思うけど…ま、自分も賛成だね」
「そうね……エレオノールさんになら……私も心から忠誠を誓う事が……できると思うわ」
ウルフヘレ、イゾルデも賛同を示す。続けて口を開いたのはオスカーだ。
「指揮官としてこのような事を述べるべきではないのかもしれないが…ひとつ、わがままを言わせて欲しい」
「あら、あなたがわがままなんて珍しいわね」
とエステル。そんな彼女に対し雄々しい笑みを向けつつ、オスカーは言葉を続ける。
「俺は今現在、この軍団の総司令官を務めている。だが…俺は結局、最前線で戦う事に血の滾りを感じるただの武人にすぎない。叶うならば、次の決戦…俺を総司令官ではなく前線指揮官として戦わせて欲しい。そして、俺は前々から感じていた。俺などよりもアンスバッハ殿こそが総司令官に相応しいと。俺からも願いたい。どうか、皇帝として――俺たちを率いて欲しい」




