最後の敵15
「ねえ、ツバキ君。あなたなら、私が言おうとしている事が分かってたりするんじゃない?」
突然エステルに話を振られ、意外な表情を浮かべる椿。だが、その問いを投げかけられた瞬間、少年の頭の中で何かがカチリとはまったような気がした。
「エレナが…皇帝に即位する…って事、ですか…?」
そう、エレオノールの皇帝即位。エステルの言う『私達にしか打てない一手』というのは、おそらくそれだ…と椿は考える。
エレオノール・フォン・アンスバッハはかつてこの世界を統治した皇帝の末裔である。皇帝に即位する大義名分は十分にある。むしろ、ヒューゴの事を自分勝手に皇帝を名乗る不届き者として非難する事も出来るだろう。
無論、エレオノールが皇帝になった所で最終的に武力でヒューゴ軍に勝たなければ意味はない。しかし、正当な皇帝の末裔がこちらの陣営のトップであると喧伝する事は大いに意味がある。聖王国と帝国それぞれの王族がいなくなった事で民衆は内心動揺しているだろう。例え、王族の事があまり好きではなくとも…何百年も続いた、それぞれの国の根幹たる王の血統が消えたのだ。そこに、かつての皇帝の血を引くものが現われたとなれば、民衆の心のよりどころとなる。
さらには味方の士気の高揚、敵の動揺をも誘う事が出来るだろう。エレオノールの皇帝就任の効果は、極めて大きなものとなるはずだ。




