最後の敵11
「それでは、今後我々が取る行動について通達します」
会議の口火を切ったのはミュルグレスだ。この集まりは、名目上は『会議』とされているが実際にはヒューゴが下した決定の通達に過ぎない。その内容を事前に全て知らされているのはヒューゴの最側近たるミュルグレスとシャルンホストのみ。
「ご存知の通り、我々は帝国および聖王国の大部分を支配下に収めています。現在我々に抵抗する勢力については――ランスロ」
「はい、ミュルグレス大将軍」
ミュルグレスに発言を促され、ランスロが言葉を継ぐ。
「現在、私達に抵抗する勢力としては主に元帝国領内に複数存在していします。その構成員は、帝国の元貴族やかつて帝国が滅ぼした国の生き残りでこの機会に再独立を果たそうとする者達など。しかしいずれも数百から数千程度の小勢力です。全て集まっても1、2万程度という所。物の数ではありません」
「将軍数名で…十分に対処可能な数字だ」
ディルクが呟くような小さな声で言った。その言葉にランスロも頷く。
「その通り。それ故に私達が問題とすべき勢力はふたつ。ひとつは聖王国残党…こちらの数は10万程度。ですが、烏合の衆と言って良い。私達の敵となったとしても脅威とはなり得ない。むしろ、最大の敵は――元北統王国領にいる、オスカー・グロスモントを長とする北統王国統治軍です」




