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最後の敵
ヒューゴの過去を、そして彼の成そうとしている事を『観た』椿だったが、それに驚いている暇もなかった。ズキズキと頭が痛む。それだけではない。まるで水の底に潜っているかのように息苦しい。
(解析を解除しないと…)
そう思うのに、解除する事が出来ない。無理に力を使い過ぎたためだろうか。
(早く、戻らないと。これ以上は――)
「誰だ」
頭の中に声が響く。
「誰だ、私の心を見ている者は」
突如、首を思い切り掴まれた。いや…実際に掴まれた訳ではないのだろう。そんな風に錯覚する程の強い敵意が、椿の心に直接ぶつけられた。
「貴様か、ツバキ・ニイミ」
声の主は他でもない、ヒューゴ・トラケウだ。
「そうか、やはり貴様も特殊な力を持っていたか」
ぶつけられる敵意が強くなる。解析の使用で剥き出しになっている心が強く強く締め付けられる。このままでは敵意に絡め取られ、戻ってこれなくなる。そんな思いに恐怖したその時、
「ツバキ――ツバキ!」
耳元で誰かが名を呼んだ。いつも自分を励ましてくれる大切な人の声だった。




