異世界転移7
「俺はなあ、最初っから分かってたんだよ!こうやって戦わされる事がなぁ!」
男が二度、三度と剣を振り降ろす。俺は床を転げまわり、なんとか斬撃を避ける。
「お前に優しくしてみせたのもそのためだ!それが騙されやがって…馬鹿が!」
「ぐうっ…!」
男の振り下ろした剣が俺の腕をかすめた。傷は決して深くはない…はずなのに、驚くほど大量の鮮血が飛び散った。
「きはは!本当に馬鹿だぜ!ちょっと優しくされただけで武器を捨てるなんざよ!」
男は歯を剥き出しにして笑う。バルコニーの上ではヒンデミッド伯爵が、
「ははは、いいぞいいぞ!」
とこれまた高らかに笑い声を上げていた。――何が、そんなにおかしいんだ。突如、恐怖しかなかった俺の心に煮えたぎるような怒りが沸き上がった。
世の中の人間は、いつもこうだ。馬鹿にして、見下して。…そんなに俺がおかしいか。俺があんたの言葉を信じようとした事が、戦いたくなくて武器を捨てた事が…お前らにとっては、そんなに笑える事なのか。
「くそ、くそ、くそ…!」
気がつけば、瞳からは涙が溢れていた。悔しくて仕方がなかった。
「泣いたら許してもらえると思ってんのかぁ!?」
男が剣を振り降ろす。俺は――もう、逃げなかった。男の剣が俺の体に触れるよりも早く、自身の拳を男の顔面に叩きつけていた。




