異世界転移6
そうだ、その通りだ。俺は内心で男の言葉に同意する。
「にいちゃん、俺はあんたを殺すなんて…そんな事できねえ」
俺だってやめたい。殺し合いなんてしたくない。でも、やめる事なんて出来るのか?
「武器を捨ててよ、俺たち二人で頼み込めば伯爵様だって許してくれるはずさ。だからよ、な…」
本当だろうか?わざわざ奴隷を買ってまで殺し合いをさせようとするヒンデミッド伯爵が、頼み込んだだけでそれを中止してくれるか?だが、試してみる価値はあるように思えた。二人とも戦意なしと見れば、伯爵も興覚めして俺達を解放してくれるかもしれない。
「おい、貴様ら何をこそこそ話している!」
バルコニー上からヒンデミッド伯爵の声が飛ぶ。それを受け、男が一歩後退しつつ俺に囁いた。
「それじゃ…頼んだぜ、にいちゃん」
「…分かった」
俺は頷きつつ、男の様子を視界の端で見る。男は地面に剣を置いていた。俺もそれを真似して地面に剣を置いた。その瞬間、視界の端にいた男が猛然と俺に近付いて来る。なんだ?いったい何を…
「ははっ…!」
男は地面に置かれた俺の剣を拾うと、笑い声を上げる。どういう事だ?互いに武器を捨てて、伯爵に頼み込むんじゃなかったのか…?そんな事を考えていると、男は剣を振り上げた。その刃が狙うのは…他でもない、俺だ。
「なっ…!」
俺は振り下ろされる刃をなんとか躱しつつ叫ぶ。
「ど、どういう…事だ!ぶ、武器を捨てて伯爵に頼み込むんじゃ…」
「ひっ…はは!お人好しだなあにいちゃん」
男の顔には笑みが浮かんでいた。卑屈で、それでいて愉快極まりないといった笑みが。




