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異世界転移4

 貴族の屋敷とやらに着くには随分と時間がかかった。男の言っていた通り、その間は一日に一度、麦粥かもしくは奴隷商人の残した残飯のような食事が出るだけだった。まるでペット…いや、それ以下の扱いだ。しかし、俺には逆らう勇気なんてなかった。そんな扱いを受けているためか、体調はあまり芳しくない。


 この世界に来てから四日目、明らかに周囲の景色が変わった。今までは荒野や山、農村しか見えなかったのが、床は石畳になり周囲には煉瓦造りの家が建ち並んでいる。


「帝都についたか」


 と、俺と一緒に馬車に乗っている男は言った。俺はずっとこの人物の事を『男』と心の中で呼んでいるが、それはこの男の名前を知らないからだ。一度だけ聞いた事があるが、


「奴隷に名前なんてもんは不要だからな」


 と言って教えてはもらえなかった。逆に俺の名前を聞かれる事もなかった。奴隷に名前が不要というのは本当なのだろう。


 帝都は広く、到着したのは夕方だったにも関わらず目当ての貴族屋敷に到着する頃にはすでに夜になっていた。巨大な屋敷、その裏口らしき所に馬車は停車する。


「おら、降りろ」


 奴隷商人に急かされ、俺達は馬車を降りる。この奴隷商は、丸々と太った中年の男だ。首や指には、いかにも成金といった感じのネックレスや指輪がはめられていた。


「いいか?お前達がお仕えするのはヒンデミッド伯爵だ。粗相はするなよ」


 それならまずは服を着せてくれと言いたかった。俺達は体にボロ布を纏っているのみで、まともな服すら着ていない。だが…俺は何も言えなかった。


 俺は、ずっと引きこもりだったんだ。高圧的に接されるとそれだけで体が硬直し心臓が激しく脈打つ。例え相手がどんなにしょうもない人間だろうと、少し威圧的な言葉遣いをされると恐怖を感じてしまう。そんな自分自身に嫌悪を感じながら、俺達は奴隷商人の後を付いていく。裏口を通り、薄暗い廊下を進み通されたのは…中庭のような場所だった。


 広さはテニスコートより少し狭いくらいだろうか。地面は土で、なんというか貴族の屋敷の中庭にしては随分と地味な所だった。そして、中庭に面した屋敷二階のバルコニーから俺達を見下ろす人物がいた。おそらく、この人物がヒンデミッド伯爵なのだろう。伯爵は、自己紹介をするでもなく唐突に言った。


「よし、それでは奴隷ども…殺しあえ」

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