IリンカーネイションI
ディスプレイ上で数多の兵達が戦いを繰り広げている。画面内の彼らは、槍や弓、火縄銃といった武器を駆使して争い、もみ合いへし合い、互いの数を減らしていく。
そして、『その男』はその様子を見ながらただ無言でゲームを操作していた。
ゲームの名前は『家康の覇道』。日本の戦国時代を舞台にした作品で、プレイヤーは任意の戦国武将を選択、その武将や配下を操作して合戦を繰り広げ天下統一を目指すという内容だ。
『その男』は、30代前後といった年頃。引きこもりでゲームオタク。それが『彼』の全てだった。
昔からそうだった訳ではない。初めてボタンが掛け違ったのは、中学生の時だっただろうか。
暗くてオタク気質な性格のせいでクラスメイトにいじめられるようになった。徐々に学校に行かなくなり、不登校になった。
ささやかな復讐心を満たそうと、自分をいじめていたクラスメイトに対する悪口をSNSに公開した事がある。「死ね」や「殺してやる」といった強い言葉も使った。――が、それは『彼』に何の益ももたらさなかった。
殺人予告を行ったという事で『彼』の方がそのSNS…さらには飛び火して匿名掲示板などで悲観された。最終的には、逆に『彼』の個人情報が特定され、顔や住所まで晒されネット上にいる不特定多数の『正義の味方』から強い非難を受けた。未成年という事で脅迫罪は適用されなかったが、警察からも厳重注意を受ける事となった。だが、『彼』は納得できなかった。
悪いのは自分をいじめていたあいつらだと思った。なぜ、正義の味方気取りをしている連中はあいつらを攻撃しない?いじめを見て見ぬふりをした担任教師は悪くないのか?警察に頭を下げてばかりで、一度も自分に慰めの言葉をかけてくれなかった両親は?
――なぜ、誰も自分の事を助けてくれない?
完全に部屋に引きこもるようになり、十数年が経過した。ずっとパソコンの前に座りゲームをプレイする日々。
『彼』は、世界を壊したかった。自分を受け入れてくれなかった世界の全てを。だが、全てを壊すなど不可能だ。それ故に、ゲーム上で世界をめちゃくちゃにした。チートで操作武将を最強の能力値にして、他の陣営に対する殺戮を繰り返す。それがささやかな…本当にささやかな『彼』の人生における楽しみだった。
「さて、次はどこを攻めるか…」
そんな言葉を呟いたその時、ふと異臭に気がついた。プラスチックの焼けるような、嫌な匂い。
「なんだ…?」
辺りを見回す。部屋の隅から白煙が立ち上っていた。近付いてみればコンセントから煙が出ている。電源付近に埃が溜まり、そこに火がついたのだろう。
「くそっ…!」
慌てて駆け寄り、電源プラグを引き抜こうと手を伸ばす。プラスチックが溶け、中身が剥き出しになった電源プラグを…。
「あがっ」
電流が手を伝い、肩を巡り心臓に到達する。
そうして、『彼』は命を落とした。少年…新見椿が命を落とす五年前の事だった。
――輪廻転生起動。
――スキル…限界突破付与。
第五章 聖騎士VS帝国の剣2 終了
第六章 ヒューゴ・トラケウへ続く




