聖都再訪8
「…行こう」
椿の言葉にハティはこっくりと頷いた。2人はヒューゴが来ているという広場へと急ぐ。今回、聖都を訪れた最大の目的はヒューゴもしくはミュルグレスの真意を知る事にある。そのためにはどちらかに近付く必要があったのだが、ヒューゴが来ているというのなら今が好機だ。
椿達が到着した時、広場にはすでに人だかりが出来ていた。多くの者は特に理由もなくヒューゴを一目見ようとするいわば野次馬達だが中には、
「うおおお!ヒューゴ閣下!ヒューゴ閣下ぁ!」
とヒューゴに対して歓喜の声を上げる者もいた。なるほど、そういった者がいても不思議ではないのだろう。ヒューゴとミュルグレスは帝国、聖王国の王族や門閥貴族を根絶やしにした。彼らに恨みを持っていた者からすればヒューゴ達は英雄だ。
(それにしても…凄い人だ…)
あまりにも人が多い。子供でありまだ背の低い椿とハティには、前方の人だかりのせいでヒューゴの姿を捉える事が出来なかった。それでも何とか前へ進もうとしたその時、
「んっ…!」
と、ハティが何かに気付いた。同時に椿もこの場の空気が変わった事を直感している。これは…戦いの前触れの空気だ。




