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聖都再訪7

 聖都の下町は、以前訪れた時とさほど大きな違いが感じられなかった。不安な表情の人々が時折目に付く程度だろうか。もっとも、クーデターで国のトップが変わったのだからそれを不安に思う人々が一定数いても別段驚くには値しないだろう。むしろ、それ以外には大きな変化がなかった事に椿は安堵した。そんな折、街を歩く男達の声が椿の耳に届いてきた。


「しかし、密告制度なんてもんのせいで生き辛くなったよなあ。ちょっと政権を批判しただけで密告されてしょっぴかれるかもしれねえんだから…」


「おい、馬鹿。街中でそんな事言ってんじゃねえって…!」


「い、いけねえ…つい…!」


 男達は立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回す。店の軒先で買い物をする者、家路へと急ぐ者――皆、それぞれの用事に意識が向いており男達の話を聞いている者などいないようだ。それが分かり、男達はほっと胸を撫で下ろし足早に去っていく。


 椿はその光景を目にして、心中の奥にある不安がまた大きくなっていくのを感じる。表面上は平穏な聖なる都だが…その裏では、何か良からぬ事態が進行している。そんな考えが脳裏に沸き上がった。と、その時。道の向こうから、どよめきとも歓声ともつかない大きな声が上がった。


「なんだ?」


「どうした、どうした!?」


 道行く人々が、どよめきの正体を知ろうと疑問の声を上げる。それに答えたのは、どよめきの方向からこちらへ駆けて来た男だった。


「す、すげえ!来てるぜ!」


「来てる?何がだよ」


「ヒューゴ・トラケウ…い、いや、ヒューゴ閣下だよ!それと、シャルンホスト閣下も!すぐそこの広場に来てるんだよ!」

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