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暗雲5

 ――バキリ、という硬質なものが砕けた音が響いた。一同がそちらへ視線を向ければ、オスカーの手によって椅子の肘掛けが強く握りしめられ、粉々に砕けていた。エステルの言葉を聞き反射的に握りしめてしまったのだろう。


「すまない、取り乱した」


 そう謝罪した後、オスカーは言葉を続ける。


「…本当なんだな、エステル・ラグランジュ」


「ええ。聖都陥落に関する詳しい経緯に関しては、不確かな情報も多いけれど…ミュルグレス・レイがその首謀者のひとりである事は間違いないわ」


「そうか。他ならぬ貴公の言葉という事であれば…信じよう」


 ミュルグレスが裏切ったという事実は、ある意味で聖都陥落以上に信じがたい。信じたくない事実だった。だからこそエステル自身が足を運び自らの口で事実を伝える事を選んだのだろう。


「でも、なんで叡智の聖騎士パラディン・オブ・プルードゥンスが裏切った訳?帝国に賄賂とか送られて裏切るような人間じゃないでしょ」


 ウルフヘレのその言葉には、椿も内心で同意した。ミュルグレスは常に自分の本心を隠しているような所があったが、少なくとも金に目が眩んで帝国側に付くような人間ではない。


「そうね。ミュルグレス・レイが裏切ったのは…賄賂だとか、脅されたとかそういう理由じゃないはずよ。そんな小さな理由で寝返った訳じゃない。――と言うよりも、私の推測ではミュルグレス・レイはおそらく最初から裏切っていた。今回の聖都が陥落するずっと以前からね」

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