千人隊編成9
「なるほど、そういう事ですか」
アンスバッハ邸、大広間。
エレオノールは、ボゥホートおよびヌガザ城砦兵が千人隊への加入を望んでいる事を聞き、深く頷いた。顔を上げると、ボゥホートと女性、それぞれに視線を向ける。
「ボゥホート・ネヴィル殿と、それと…」
「すみません、申し遅れました。私の名は、カトリーヌ・ロランと申します」
と、救護担当の女性は答えた。軍人、というよりは淑女といった表現の方が似合う柔らかな声だ。
「ありがとうございます――。ボゥホート・ネヴィルにカトリーヌ・ロラン殿。あなた方の申し出、有り難くお受けいたします」
そう言って、エレオノースはボゥホートと向き合う。
「近衛に入られる前は、カイ・ネヴィル卿の部隊で活躍されていたと聞き及んでいます。あなたが味方に加わってくださるのであれば…この上なく心強い。私はまだまだ未熟な隊長ですが、どうか共に戦ってください」
「いえいえ、私こそまだまだ未熟であります。むしろ、エレオノール殿の下で戦えるなど身に余る光栄!粉骨砕身、全霊で戦わせていただきます!あ、それと…私の事はボゥとお呼びください」
「分かりました。それではよろしくお願いします、ボゥ殿」
「はっ!」
エレオノールはボゥに笑顔を向けた後、ロランに視線を移す。
「ロラン殿の申し出もありがたくお受けさせていただきます。ただ…私が隊、北部要塞への移動が決定しています。次に聖都に帰ってくるのはいつになるか分かりません。それに、私は軍の中での立場も決して良くはない。我が隊にいる事で昇任に響く事もあるでしょう。その事をよくお伝えして…その上で改めて私の隊に参加していただくか、否かを決めていただこうと思っています」
「はい。ですけど…エレオノール隊に志願した方々は、その事も納得済みだと思います。必ずしも楽な道ではないと分かっています。それでも…あなた方と共に戦いたいのです」
「ありがとうございます、ロラン殿」
エレオノールはロランへも微笑みを向けた。
「ロランさん、よろしくっす!」
エレオノールの横に控えていたエマが、ロランへと走り寄る。
「自分、城砦での戦いで怪我した時、ロランさんに手当てしてもらった事があるっすからねー。また一緒に戦えて嬉しいっす!」
「ふふふ、そうでしたね。またよろしくね、エマさん」
「はいっす!」
エマとロランは手を握り合った。さらにエマはボゥへも顔を向けて、
「ボゥさんもよろしくお願いしまっす!」
と元気に挨拶をした。
「はい、こちらこそ。――エマ殿の事はカイ義兄から聞き及んでいます。模擬戦闘で一緒に戦われたのだとか。義兄もエマ殿の事は賞賛しておられました。義兄が他人を認めるのは珍しい事です。そんなエマ殿と共に戦えるとは、大変光栄であります」
「い、いやあ、自分なんてそんな偉いもんじゃないっすよ」
照れ臭そうに頭をかくエマ。
「それよりも、こちらこそボゥさんやロランさんと一緒の隊で戦えて光栄っす。――頼りになれる人たちが増えて良かったっすね、隊長!」
満面の笑みをエレオノールに向けた。しかし、エレオノールは苦笑を返す。
「ふふ、頼りになる方々である事は確かだが…君も頼られる存在にならないといけないよ。我が隊の副長は君だ。私が指揮を取れない状態の時は、君がボゥ殿やロラン殿を指揮しないといけないんだからね」
「えっ…!自分が副長を継続するんっすか?てっきり、ボゥさんが副長になるもんだと…」
「いや、隊長である私の意図を最もよく汲み取れるのは…リッツ副長、君だ。時に混乱し、連絡もままならなくなる戦場にあって、それはそれは大きな武器となる。我が隊の副長は君しかいないんだ」
「…わ、分かりましたっす。ボゥさん、ロランさん…その他の皆さんに認めて貰えるよう、千人隊の副長として今まで以上に頑張りまっす!」
エマはぐっと両手の拳を握りしめた。
一時は絶望的にも思われたエレオノール千人隊だが…その編成は整いつつあった。




