表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

827/1118

暗雲2

「やっほー、ツバキ君にハティちゃん」


 エステルは椿と目が合うと、笑顔を浮かべ手を振ってきた。しかし椿としては突然現れたエステルに戸惑いを隠せない。


「あれあれ?どうしたの?ひょっとしてエステルお姉さんの事、忘れちゃった?悲しいなあ」


「そんな事はないですけど…どうしてここに…?」


「いやあ、みんなが元気かなーって思ってねー…抜け出して来ちゃったのよ。はい、ハティちゃん。おみやげ」


「…なにこれ?」


 懐から封書を取り出し、ハティに渡すエステル。怪訝そうにそれを受け取った少女だったが…、


「ハティちゃんの弟妹(かぞく)からのお手紙」


 そうエステルに説明されると、


「わっ…!」


 と、飛び上がらんばかりに喜び、封書を開けた。その中に入っていたのは…正確には手紙ではなく、絵だった。子供っぽいタッチで、ハティや椿と思われる人物が描かれている。巨大要塞(フルングニル)にいるハティの弟妹(かぞく)達が描いたものだろう。


「えへへ…」


 ハティは頬を緩め、弟妹(かぞく)達の描いた絵に頬ずりする。その様子を見ながらエステルは嬉しそうに言った。


「いやー、そんなに喜ばれると、私としてもお手紙を届けた甲斐があるわー」


 椿もまた、心から喜んでいるハティの表情に嬉しくなる。だが同時に――胸の奥では胸騒ぎを覚えてもいた。エステルが自ら北統王都まで来た本当の理由は、様子を見るためでも手紙を届けるためでもない…おそらく、他の理由があるのだと。そんな確信めいた予感があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ