エレオノールvsカイ23
椿たちが温泉での休暇を終え、北統王都へと戻る馬車の中――。
「いやぁ、ハチミツたっぷりのお菓子は最高だったっすねえ」
満足げにそう呟くのはエマだ。
「もちろん、自分が一番好きなのはエレオノール隊長手作りのお菓子っすけどね!」
「なに…エレオノール殿は料理も出来るのか…?」
カイが驚いたように身を乗り出す。
「そうか、エレオノール殿のような包容力を出すには料理の腕も必要、と…。――エレオノール殿!よければオレにも料理を教えてくれないだろうか」
「私が作れる料理の腕など大したものではありませんが…勿論、構いませんよ」
エレオノールはカイに向かって優しく答える。そんな二人のやり取りを見ながら、椿は思う。
(本当に…エレナとカイさん、仲良くなったなあ…)
元々不仲だったという訳ではないが、カイはエレオノールと話をする際には対抗心のようなものが見える事があった。だが、今はそれはない。エレオノールに対して素直な親しみと敬愛の念のようなものが感じられる。
「ふふっ…」
気付けば椿の表情は綻んでいた。自分にとって大切な存在であるエレオノールと、苦楽を共にし戦友とも呼べるカイ。そんな二人の仲が良いというのは…純粋に嬉しい事だった。




