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エレオノールvsカイ11
「カイさん、僕は…」
「いや、今はいい」
何か言いかけた椿を、カイが制した。
「今はただ、オレの気持ちを知っていてくれるだけで十分だ。お前と一緒にいたいという、オレの気持ちを」
「…はい」
「答えを急かすつもりもないしな。いずれ、お前の気持ちを聞かせてくれ」
「分かりました」
カイを正面から見つめ返し、椿は頷いた。
「ただ、もうひとつオレから言えることがあるとすれば…」
湯の中を滑るように移動し、椿に近付くカイ。
「あ、あの…カイさん…!?」
「もしもオレの隣に来る気があるのなら…オレは、お前を飽きさせないつもりだ」
そう言って、カイは椿の体を抱きしめる。
濃い湯煙で互いの姿がはっきりとは見えないが、言うまでもなく両者ともに今は裸だ。カイのしなやかな腕、そして意外な程に柔らかな胸が椿の体を包み込み…、
「の、のぼせそうなんでもう出ますね…!」
椿は立ち上がり、慌てて湯船から体を出した。そしてそのまま浴室を出ようとして…一度、カイの方を振り向く。
「カイさん…ありがとうございます」




