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北統王国統治20

「全員の報告を聞き、北統王国統治が順調に進んでいる事は理解した。だが…オレ達には足りないものがある。今のオレ達に必要なのは休息だ」


 そう言ってカイは一同を見回す。


「ヴォルフラムとの戦いから…いや、その前からオレ達はずっと戦ってきた」


 椿やエレオノールは北統王国への進攻、対アイヒホルン戦と連戦だった。他の面々も過程こそ違うがヴォルフラム軍を打ち倒すまで戦いの連続だった事には変わりない。


「この辺りで一度本格的な休息を取るべきなんじゃないか、とオレは思うが…」


 そんなカイの言葉に頷くのは、イゾルデ。


「そう……ね……。兵達には可能な限り休息を与えているけれど……指揮官である私達が働きっぱなしだと……兵達も休み辛いでしょうしね……」


「でも、ネヴィル卿からそんな提案が出るなんて意外だねえ」


 ウルフヘレが肩をすくめる。


「『休まず働け』ってタイプだと思ってたからさあ。ただまあ、休息が必要って意見には賛成かな」


「私もカイ殿の意見には賛成です。統治とは気長に取り組むもの…長いスパンで考えなければなりません。休息も必要という考えは、もっともだと思います」


 エレオノールもカイに同意する。それに気をよくしつつも、カイは椿に視線を向けた。


「ちなみに、ツバキ…お前は、どう思う?」


「はい、僕も賛成です」


 椿は微笑んだ。


「…カイさん、ありがとうございます」


「え…?」


「『自分達にも休みが必要』って…きっと、凄く言い辛い事だと思うんです」


 責任感の強い人間ほど、自分の疲労を鑑みず無理をして働いてしまうものだ。身近にいるエレオノールや、自分自身にもそういった面があるからこそ椿はその事がよく分かる。


 そして戦いにおいては実際に無理をしなければならない場面があるもの事実。だが、そうではない場合はしっかりと休める時に休んでおくべきなのだ。しかし、北統王国統治軍の幹部であり、人の上に立つ者が『自分達も休みたい』などとはなかなか言えるものではない。


「それなのに、言い辛い事を言ってくれて…ありがとうございます、カイさん」


「あ、ああ…こ、この程度…気にするな」


 そんな風に答えながらも、椿に感謝された事が嬉しく口元に笑みが浮かびそうになってしまうカイだった。

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