北統王国統治8
「は、はい…た、助けていただきたおかげで怪我はしていません…。あ、ありがとうございます…っ」
「そうか、ならば良かった」
敬愛の込められた眼差しで自身を見上げる少女に、カイはニコリともせず応じた。しかし少女はそれを不快には思わなかった。むしろ、その冷たさすら感じる態度にドキリと胸が高鳴る。
「あの…っ。お名前を、聞かせていただいてよろしいでしょうか」
「オレの名か?オレは聖王国軍のカイ・ネヴィル。治安維持隊を率いている」
北統王都治安維持隊隊長。それが今のカイの肩書だった。
「今日は災難だったな。今後はこの辺りに巡回の兵を配置するとしよう。怖い思いをする事はもうないはずだ」
「あ、ありがとうございます…何から何まで…」
「それがオレの仕事だからな。もし何かあれば兵を頼るといい。じゃあな」
立ち去ろうとするカイ。
「ま…待ってください!」
カイの背に少女が駆け寄った。
「どうした?」
「あ…あの…カイ様…お慕いして…。い、いえ!」
少女はそこまでいって、顔を赤くして首を振る。
「お、応援してます!どうか、お体にお気をつけを…!」
「そうか、気遣い感謝する」
凛々しい表情で答えた後、カイは颯爽と立ち去っていった。




