北統王国統治4
オットーが出ていった後、執務室で椿はほっと胸を撫でおろした。
「オットーさんが強力してくれる事になって良かったね、エレナ」
「ああ。これも君が監査機関という考えを提示してくれたからに他ならない」
エレオノールはそう言いながら、手元の書類に目を落とす。
「そして、私達に協力してくれる者もこの数日で随分と揃ってきた…」
エレオノールと椿は、先ほどのオットーのような人材をすでに多数発掘していた。
国王や貴族達に逆らったために苦境に立たされている人物は、北統王国には多数いる。飢饉の際、民衆に小麦を配るべきだと言って北統国王の怒りを買って仕事を奪われた商人。貴族の無茶な注文を窘めたために逆恨みされ、引退を余儀なくされた職人ギルドの親方。その他、オットーのような上層部に逆らい処罰を受けた下級官吏たち。
そういった者達を登用する事によって、エレオノールと椿は北統王国統治のための人材の充実を図っていた。エレオノールを始めイゾルデ、ウルフヘレなど聖王国軍には政治能力が高いものがいるが、現地に長年住み北統王国の事を知り尽くした人間の協力がなければその能力も発揮されない。それに何よりも、正しい事をしたにもかかわらず不遇な目にあってる人を一人でも多く救いたい。椿はそんな風に考えていた。




