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北統王国・王宮9
「バウテン上将軍に同行…?」
椿に耳打ちされ、カイはその身を硬くする。それは椿の言葉の意味が理解できなかったから…というよりは、いきなり耳打ちされてドキリとしてしまったためだが…それはともかく。
「理由を聞かせてくれないか」
と、椿に意図を問うた。椿の狙いがどこにあるのか、それをある程度は把握しておかないと彼の望む働きが出来ないと考えたためだ。
「はい、北統国王の本音を…見極めて欲しいんです」
「なるほど…分かった」
カイは席を外し、素早く北統王国軍の鎧を身に付けバウテン達に合流した。そしてカイはバウテンに近付き、小さく囁いた。
「…北統国王の真意を見極めるため、同行させてもらう」
「それは――…いや」
一瞬ためらったバウテンだったがすぐに考えを改め静かに頷いた。ここでカイの同行を拒めば、北統王国は聖王国軍に不信感を抱かれない。
そうしてバウテンと共に北統国王の前に並び、北統国王の意図を知り…カイは、ようやく椿の懸念を理解した。
(そうか…これが北統国王のやり口か)
と。




