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千人隊編成3
中型亜竜は、無機質な瞳で椿を睨みつけながら時折口を大きく開き、鮫を思わせるその牙を覗かせる。あんなものに咬まれれば、ひとたまりもないだろう。
最大限に警戒しながら、椿はゆっくりゆっくりと後ずさる。
(よし、あと少し…)
扉までもう後数歩、という所まで迫った。後は建物の中に飛び込むだけ――というその時、
「あれ、みなさんいらっしゃらないんですか?」
先程椿が来た裏道から、一人の少女が顔を出した。この厩舎に用事があって来たのだろう。
「来ちゃ駄目だ…!」
椿が叫ぶ。が、遅かった。少女は広場に飛び出し…そして、中型亜竜と目が合う。手に持ったカゴがどさり、と地面に落ちた。
「ひっ…」
少女は、恐怖のあまり逃げ出す事も出来ず立ち竦む。中型亜竜は、大きく跳躍すると少女の喉元目掛け口を大きく開いた。




