北統王国・王宮6
(そ、そんなのって…!)
バウテンの後ろに控える見張り兵心に怒りが沸き上がる。
(帝国と組んで聖王国軍と戦う事を決めたのは国王と大臣達じゃないか!)
バウテンに責任がないと言うつもりはない。今回の戦いに限って言えば、バウテンは積極的に自らの参戦を主張した。しかし、そうなったのは元はと言えば北統王国が帝国と同盟を結ぶと決めたからだ。そしてそれを決定したのは…国王と、その取り巻きである大臣達だ。バウテンは自らの責務を全うしようとしただけに過ぎない。
にも関わらず、全ての責任をバウテンに押し付けるというのは…あまりにも虫が良すぎるというものだろう。
(確かに、バウテン上将軍に全ての責任を押し付ければ…トールヴァルド国王は、ある程度権力を保つ事はできるかもしれない…)
全てがバウテンの責任という事になれば、聖王国も北統国王に対して強い態度は取らないだろう。さすがに国王のままでいるとはいかないものの、聖王国配下の貴族という地位を得る事が出来るかもしれない。だが…バウテンは、最悪の場合聖王国軍によって処刑されるだろう。
「国王陛下、並びに大臣殿」
突如、バウテンの後ろに控えていた指揮官のひとりが声を上げた。
「あんた達は…バウテン上将軍に全てをなすりつけて自分達だけは助かろうと、そういうつもりか?」
その指揮官の声には凛とした響きがあった。兜に隠され顔はよく見えないが、僅かに見えるその瞳は鋭い。国王と大臣達を咎めるようなその指揮官の言葉に、国王や大臣達は一瞬気圧されかける。だが、国王の横に立つ宰相マルッティがすぐに怒気を露わにした。
「なんだ、貴様…国王陛下や我々を相手にその口の利き方は…!貴様にもバウテンと同じく罪を被せてもいいのだぞ!」
「オレの事はどうでもいい。だがな…バウテン上将軍は長年国のために尽くして来たんだろう。あんたらが、危険な目に合わないように…前線で命を張ってきたんだ。そんなバウテン上将軍を…斬り捨てるのか?」




