北統王都へ
隊列を組んだ聖王国軍が、北へ北へと進んでいく。目指すは北統王都アトゥーンだ。国の心臓部ともいえる王都への進軍…北統王国としては何としても阻みたいはずだが、聖王国軍を止める力を持つ者はもはやいない。
「あれだけの激戦の後でゆっくり休む間もなく進軍…必要な事とは分かっちゃいるが、面倒だな。あー…一日中寝ててえ」
リヒターがそうこぼした。季節はもう冬。北統王国では雪が降り始める時期だ。雪が積もり行軍が困難になる前に、北統王都へ到着しておきたかった。
「…真面目になったと思ったら、またいつもの感じに戻ってるっすね、リヒターさん」
隣を進むエマが苦笑した。
「でも、リヒターさん…この戦後処理が終わったら、本当に軍をやめちゃうんっすか?」
「もちろんだ。のんびり暮らすのが俺の夢だからな。リッツの嬢ちゃんはどうすんだ?」
「自分はどこまでもエレオノール隊長に付いて行くだけっす!」
「なんだ、やはりそうか…残念だな」
と、やや先を進んでいたカイが馬の速度を落とし会話に入る。
「お前さえ良ければオレの部隊に引き抜こうと思っていたんだがな」
「いやあ、そう言って貰えるのは光栄っすね」
カイは他人を中々認めない事で有名だ。そんな彼女に自分の所に欲しい、と言われるのはエマにとって嬉しい事だった。
「それならいっそ、カイさんが正式にエレオノール隊に入る…ってのはどうっすか?」
「なるほど、オレがエレオノール隊に…か」
カイは隊列の先を進むエレオノールに視線を向けた。




