決着21
結局、椿とエレオノールが自分達の天幕に戻る頃には遠くの山から太陽が昇り始めようとしていた。
(綺麗な空だな…)
この世界に来てから何度も目にした夜明け。にも関わらず、今日の夜明けはいつもと違って見えた。それは今回の勝利が今までとは違う…聖王国に決定的な平和をもたらすものだったからかも知れない。楽な道のりではなかった。ハティやレイアは負傷し、カムランは命を失った。椿自身も大きく傷つき…そして、初めて人を殺める事となった。
今までの苦難はとても言葉で言い表せるものではない。だからこそ――この夜明けが尊いものに思えた。当たり前ではなく、自らの手で掴み取った夜明け。
「綺麗だね」
エレオノールのその言葉に、椿は横に立つ彼女を見上げる。エレオノールは、椿に向かってそっと手を差し伸べた。
「うん」
頷きながら、少年は手を握り返す。
「エレナと一緒に、この夜明けを見る事ができて…よかった」
苦難の果てに掴み取ったこの光景。それを眺める今、隣にエレオノールであるという事実が、ひょっとしたら自分にとってもっとも嬉しい事なのかもしれない――椿は、そんな風に思った。




