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決着9

 帝国軍左翼。シャルンホスト率いるこの軍団にも、帝国軍敗北という知らせは届いていた。


「そうですか、負けましたか…。それはそれは」


 肩をすくめるシャルンホスト。その口元には、嫌らしい笑みがへばりついている。結局、彼はこの戦いで一度たりとも帝国左翼軍を戦わせようとはしなかった。


「シャルンホスト上将軍(ハイ・ジェネラル)…なんだ、その顔は」


 ヴォルフラムから派遣された大十字(グランクロワ)、ザシャ・ジェロームは静かな、それでいて怒りの込められた声でシャルンホストを咎めた。


「楽しいのか?我が軍が負けて…」


「まさかまさか。ですが、よく言うではないですか。辛い時こそ、笑顔でいよう――と。ですからほら、ザシャさん。あなたも笑って笑って」


 そのふざけた物言いに、ザシャの中で殺気が膨れ上がる。


(やはり、この男は…殺すべきだ)


 ザシャの中で決意が固まった。むしろ決断するのが遅かったくらいだとすら思っていた。


 例えシャルンホスト率いる帝国左翼軍が積極的に戦ったとしても、聖王国軍に勝てたかどうかは怪しい。敵の№2であるミュルグレスを釘付けにしたという意味では、最低限の仕事を果たしたと言えない事もない。だが、その結果得をしたのは誰か。聖王国軍と、そして――、


(ヴォルフラム閣下は死に、シャルンホストとその手勢は無傷。つまり、この戦いで利を得たのは…ヒューゴ・トラケウ)


 『帝国の双剣』と並び称されるヴォルフラムとヒューゴ。そのうちの一人が死んだ事で、ヒューゴは並ぶ者のない帝国軍人のトップとなった。


(ヒューゴ大将軍フィシュタル・ジェネラルもシャルンホストも何を考えているか分からない。…殺せる今のうちに、せめてシャルンホストだけでも)


「これ以上無駄な話をするつもりはない…俺はエーミール、フェリクスと連絡が可能か試みる」


 そう言って、ザシャはシャルンホストの前から立ち去る素振りを見せた。そしてシャルンホストの背後を通り過ぎようとしたその時…ザシャは、袖口に隠していた短刀(ダガー)を握りしめた。


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