終盤戦51
「中央から近付いてくる騎馬隊は士気が高いです!注意してください!逆に右手側の敵は士気が低い…多分、ヴォルフラム大将軍が討たれた事にまだ動揺しているんだと思います。おそらく積極的には攻めて来ないはずです…!」
「わ、分かった…!」
椿は元カムラン配下の聖王国兵の間を駆けまわりながら、解析で判明する限りの敵軍に対する情報を伝える。それに応じ動く事で、司令官不在でありながら聖王国兵は互角の戦いを演じる事が出来ていた。しかし、長くは持たない事は椿にも分かっていた。
椿は、領域解析でフェリクスとエーミールという二人の指揮官の能力も把握していた。この両名が健在である限り、こちらに決定的な優位が訪れる事はない。
(ヴォルフラム大将軍が討たれた後も、動揺する事なくすぐに兵を纏めた…凄い人達だ)
敵は一流。椿はそれを素直に認めた。だが、その上で…勝ちを確信していた。何故ならば…敵以上に味方を信じているから。
「聖王国左翼軍の勝敗が決着!」
「中央第二軍より伝令!」
別々の情報を持つ伝令が椿達のもとに到着したのは、ほぼ同時だった。そして彼らはそれぞれの情報を叫ぶ。
「聖王国左翼軍――勝利!オスカー・グロスモント卿がバウテン軍を降伏させました!」
「中央第二軍、エレオノール・フォン・アンスバッハ軍団長、敵軍団長のエルヴィン・グリュックスを撃破!」
両名のもたらした情報――それは、それぞれの戦場における聖王国軍の勝利を告げるものだった。




