終盤戦49
「さすが正義の聖騎士の右腕…やるねえ」
ヴォルフラム配下の大十字、エーミールはユーウェインと対峙しつつ笑みを浮かべた。対するユーウェインはというと、怒りの視線をエーミールに向け言い放つ。
「貴様達の総司令官が討たれたというのに、随分と余裕だな」
「それはお互い様だろう?」
肩をすくめるユーウェイン。すでに両者の元には、カムランがヴォルフラムに討たれた事。さらにその後にヴォルフラムも椿に討たれたという情報は伝わっている。
カムランが討たれた事でユーウェインは明らかな怒りを見せた。その対象は…自分自身だ。自分がもっとしっかりしていれば。こんな相手に時間を取られず、カムランの傍にいる事ができれば…ひょっとしたら、カムランは死ななかったかもしれない。そう思うと、自らの不甲斐なさに対して怒りを覚えずにはいられなかった。
一方のエーミールはというと、ヴォルフラムが討たれたというのに飄々とした態度を崩さない。まるで堪えていないという風だ。しかし、その内心は違う。
(大将軍閣下…)
エーミールの胸中を過るは、ヴォルフラムの姿。彼はフェリクス程にヴォルフラムを信望してはいなかった。あくまで優秀な指揮官だから従っているだけ。――そう、思っていた。
だが、かの者がいなくなって初めて気が付いた。自分は、あの人に心底惚れていたのだと。それ故に、エーミールは飄々とした表情の下で決意を固める。
(ここから勝つぞ…ヴォルフラム閣下の弔いだ。――なあ、フェリクス)




