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終盤戦48
「ヴォルフラム閣下が…バカな!」
ヴォルフラムが倒されたと知り、最も大きな動揺を受けたのはフェリクスだ。彼にとってヴォルフラム・フォン・クレヴィングとは崇拝の対象に近かった。世界最強であり、帝国の誇り。そんなヴォルフラムが討ち死にしたなどという事実はにわかには認められなかった。
認めたくない、そんな事はあり得ない。まだ二十歳を過ぎたばかりのフェリクスの感情がそう叫ぶ。
だが…彼は大十字である。それは、ただ感情に任せるだけの未熟な青年が手に出来る称号ではない。
「私達は…勝つ!」
そう宣言した瞬間には、フェリクスの胸中から先ほどの動揺は消えていた。彼は生真面目であるが故に脆い自分の心の中を知っていた。だからこそ――今は、聖王国軍に勝つ事だけを考えようと決断した。何故ならば、勝つために最前線を尽くしていれば…ヴォルフラムの死について考える余裕はないからだ。
(互いに総司令官が討たれたという意味では現在戦況は互角!いや…兵の数ではいまだにこちらが上回っているはず。まだだ…まだ戦いは、終わっていない!)




