終盤戦47
(勝っ…た…?)
椿は、信じられない想いでヴォルフラムを見上げていた。だが、ヴォルフラムはもうピクリとも動かない。間違いなく、死んでいる。
(僕が…殺したんだ)
ヴォルフラムの喉に短刀を突き刺したのはハティだ。とはいえ、止めを刺したの椿に他ならない。そして、椿が直接誰かを手にかけたというのは初めての経験だった。自分の行動により、先ほどまで生きていた人物が命を失った。自らの成した事の重みが少年の肩に伸し掛かる。だが――、
(だからこそ…僕は、前を向かないといけないんだ…!)
ヴォルフラムを倒した。そうしなければ、守れないものがあったから。ならば――立ち止まってはいられない。
「帝国軍総司令官、ヴォルフラム・フォン・クレヴィング大将軍は討ち取られました!」
椿は立ち上がり、そう叫んだ。
無論椿が叫ぶまでもなく、ヴォルフラムが討たれた瞬間は多くの兵が目にしている。だが――彼らは、信じられなかった。世界最強たるヴォルフラムが倒されたなどという事が。
本当はまだ生きており、今にも動き出す事を信じていた帝国兵も多い。だが…椿の言葉には、勝者のみが持ちうる迫力がある。信じられなくとも、ヴォルフラムが敗北したという事実を誰もが認めざるを得なかった。そして、それは奔流の如き勢いで兵達の間を駆け巡った。




