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終盤戦46

 ヴォルフラム・フォン・クレヴィングの一生は戦いと共にあった。彼が生まれた頃の帝国は、当時から『帝国』とは名乗っているものの、決して周辺国家に対して優位的な立場ではあったとは言い難い。あくまで聖王国や北統王国と並ぶ国のひとつであった。だが、ヴォルフラムが戦場に立つようになりそれは一変した。


 ヴォルフラムは出陣した戦場で常に勝利を収め、帝国は他の国の領土を徐々に侵食していった。『徐々に』しか浸食できなかったのには、理由がある。


 ヴォルフラムは最強とはいえ、彼はただひとりしか存在しない。もしヴォルフラムが敵国深くに侵入してしまえば、その間に帝国は他の国に侵攻を受ける。ヴォルフラム・フォン・クレヴィングは生粋の武人ではあったが、だからこそ主への忠義を重んじた。自分が敵国を侵略している間に王の命が危険に晒されるような事はあってはならない。


 それ故に、ヴォルフラムは敵国の奥地にまで攻め入るという事が出来なかった。にも関わらず――だ。ヴォルフラムの存在は、国家間のパワーバランスを崩壊させた。現在の帝国があるのは、ひとえにヴォルフラムの功績故と言っていいだろう。そしてヴォルフラムが戦場に立つようになってから約半世紀――気が付けば帝国は他の国の領土を奪い続け、圧倒的な国力を手にしていた。


 そしてさらにもう一人の大将軍フィシュタル・ジェネラル、ヒューゴの登場によって帝国は本格的な侵攻を開始、本格的な乱世が訪れる事となるのだが…。その土台を作ったのは、全てヴォルフラムと言って良い。『帝国の双剣』と呼ばれるヴォルフラムとヒューゴの両名だったが、功績という点ではヴォルフラムはヒューゴを圧倒していた。


 たったひとりで時代すら変えた人物、ヴォルフラム・フォン・クレヴィング。彼は、カムランという好敵手を倒しながら、最後はツバキ・ニイミという少年に討たれる事となった。


 だが、彼は案外こう思いながら死んでいったのではないだろうか。


 ――戦場で果てるならばそれはそれで悪くはない…と。

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