終盤戦18
「ンだとォ!?」
ジークフラムの顔に驚愕が浮かぶ。彼の人並み外れた動体視力は、今何が起きたのかをはっきりと捉えていた。
「こいつ、わざと弾き飛ばされやがったのか…!」
そう、レイアは最初からジークフラムに力勝負など挑んではいない。彼女の狙いはむしろ、ジークフラムの力を利用する事にあった。振り降ろされた斧槍に対し大剣を斜めからぶつけ、その衝撃を利用し斬撃を見舞う…それがレイアの取った戦法だ。
否――戦法ではなく、神技か。圧倒的な質量と速度で叩きつけられるジークフラムの攻撃にわざと弾かれつつ、狙った場所に斬撃を見舞うなど並大抵の者であれば一万回挑戦した所で成功しないだろう。だが…レイアは、それを実行してみせた。
ぐらり、と竜の巨体が揺らいだ。かの超常の生物と言えど、2m近い大剣の一撃を足に見舞われれば鱗を穿ち、肉を断たれ…骨にまで負傷は及ぶ。もはや機動力は完全に削がれたと言っていいだろう。
「さすがは隊長…!」
竜とレイアの戦いを見守っていた剣士隊の一人が感嘆の声を上げた。だが、その瞬間――怪物はすでに次の行動を開始していた。
「ウルァアアアア!」
ジークフラム・ガイセは斧槍を大きく振りかぶる。そして――自らの乗る竜に向かって振り下ろした。




