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中盤戦40

(ジークフラム隊長と戦っている相手がエレオノール・フォン・アンスバッハじゃない…?」


 当のジークフラム本人は「まァいい」と一笑に付したが、彼の副長マルガレーテ・セファロニアはそうはいかなかった。聖王国軍中央第二軍の軍団長が未だに姿を現さない…何か理由があるはずだ。


(流れ矢でも受けて負傷した?いえ…)


 そうであったら嬉しい限りだが、それは都合の良すぎる想定というものだろう。


(ならば――)


 と、さらに考えようとしたその時。


「ぐっ…ズメイ…!」


 彼女の前方にいた帝国軍竜兵が苦悶の声を漏らす。


「悪いな、(ドラゴン)に罪はねぇ、お前らも元同僚だ。けどな――」


 そう言って投槍(ジャベリン)を構えるは、聖王国軍竜兵分隊長ズメイ・バルトシーク。彼は眼前の竜兵の乗る大型竜に向けて投槍(ジャベリン)を投擲。その切先は(ドラゴン)の固い鱗を突き破り、肩に突き刺さった。


「俺は俺で、戦う理由があるんでな」


「ズメイ殿…!」


 マルガレーテが歯噛みする。ジークフラムがレイアと戦っている現在、今度はこちらがズメイに押され始めている。今までは二体以上の大型竜で当たる事でなんとか押さえていたが――、


投斧(フランキスカ)部隊、横だ、横に回り込むんだ。ズメイの旦那と射線が重ならないようにな」


 レイアと共に出現した剣士隊が小型竜に対処しているため、投斧(フランキスカ)に余裕が生まれた。それを的確に運用しリヒターが大型竜を牽制。ズメイが自由に動ける状況を作り出している。


「敵軍団長の事を考えている余裕は…なさそうですね」


 マルガレーテはエレオノールの存在を一時頭から消し去り、自ら(ドラゴン)を駆り前線へと進む。


 その頃、エレオノールはというと――敵軍団長、エルヴィン・グリュックスの本陣を目指していた。

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