中盤戦33
「隊長、しかし…!」
未だ躊躇するマルガレーテ。しかし、ジークフラムはそんな彼女の言葉など聞き入れはしない。
「大型竜!突撃しろォ!被害なんて気にすんじゃねェ!敵の部隊長クラスを狙え!小型竜も同じだ!」
「おお!待ってたぜ親分!」
竜兵達はジークフラムの命令に歓呼で応え、大型竜は聖王国軍に向かって突撃を開始する。
「投斧部隊、我慢だ。敵を引き付けろ――今!」
大型竜が射程に入るのを待ち、リヒターが投斧部隊に命令を下す。約500本の投斧が一斉に大型竜を襲った。それは竜の体に突き刺さり、硬質な鱗すら穿ち血を噴出させる。だが――、
「クソ竜共!この程度で怯んでんじゃァねえぞ!」
ジークフラムが吠える。その声を受け、竜は突撃の速度を上げた。まるで投斧よりも味方であるジークフラムの方が恐ろしいと言わんばかりに。
「止められねえか…!」
リヒターは歯噛みする。これもある程度想定していた事だが、負傷を覚悟で突撃されれば投斧では竜を完全に止め切る事はできない。
投斧は確かに強力だ。竜の鱗を突き破り出血を強いる事が出来る。それを放置すれば竜であろうといずれは死んでしまうだろう。しかし――竜を即死させる事はできない。
使い捨てる覚悟で竜に突っ込まれれば、それを止める手立てはなかった。いや、ひとつだけ存在する。竜が圧倒的な力を持つならば、こちらも竜をぶつければいい。
「竜兵分隊!俺達で敵を食い止めるぞ!」
ズメイの号令で五頭の竜がジークフラム達の前に立ちはだかった。




