中盤戦32
「ちっ…クソが…!」
ジークフラム・ガイセは焦れていた。宿敵である女騎士と少年…すなわちエレオノールおよび椿と戦えるかと思えば二人の姿は見えず。代わりに現れたかつての部下、ズメイとの戦いに気分が高揚しかけたと思えば相手は距離を取ってのあからさまな時間稼ぎ狙い。
――つまらない。
それが今の彼の思いだ。
戦略的に見れば、現在中央第二軍同士の戦いは互角。いや…帝国軍側は攻勢に出ており、軍団長であるエルヴィンは未だ後方に控えている事を鑑みれば帝国側がやや有利といった所。決して悪い状況ではない。だが、そんなものは知った事ではなかった。
ジークフラムは投斧兵を相手に戦闘を繰り広げる副長に向け怒声を上げた。
「おい!マルガ!何やってやがる!」
実質的に竜兵の指揮を取っている特務竜兵隊副長、マルガレーテ・セファロニアの采配は決して悪くない。投斧の集中攻撃を浴びないよう竜を分散させ、敵にプレッシャーを与え、かつギリギリで投斧を避ける事の出来る距離を保ち被害を最小限に抑えている。だが――それは、ジークフラムの望む戦いではなかった。
「竜兵隊、突っ込むぞ!――突撃用意だ!」
「ジークフラム隊長…!?」
突然の突撃命令にマルガレーテは眉をひそめる。
「隊長、それでは投斧の射程圏内に入り竜兵に被害が…!」
「バカが!俺らァ戦争してんだ!被害にビビってんじゃァねえ!突っ込んでここの軍団長…女騎士をあぶり出すぞ!」




