中盤戦31
中央第二軍の戦闘は熾烈を極めていた。
「おぉおぉらぁ!」
「ちィ…!」
竜に乗るズメイにより放たれる投槍。ジークフラムはそれを斧槍で弾く。片腕、しかも先ほど腹部に投槍を受けたとは思えない身のこなしだ。ズメイの投槍は最初の一撃を除き、ジークフラムに対して全くダメージを与えられていない。しかし――、
「逃げんじゃねえ!ズメイ…!」
ズメイは常にジークフラムから距離を取って戦い続ける。両者とも竜に乗っているため機動力は、ほぼ互角。この状況が続けばズメイはジークフラムを仕留める事はできないが、逆にジークフラムもまたズメイを倒す事はできない。
「悪ぃが、あんた相手じゃこうやって戦うしかないんだよ」
ズメイは小さく呟いた。
当初の想定では、最初の一投で勝負を決するつもりでいた。ジークフラムがリヒターに注意を向けている際の一撃――これで仕留める。それが出来れば理想的だった。しかし、相手は超人的な反射神経で投槍急所を躱し、あまつさえ化物の如き筋肉で致命傷を防いだ。
ズメイ・バルトシークは自らの実力を弁えている。自分ではおそらくジークフラムに勝てない、と。ならば、
(俺の役目はジークフラム・ガイセを引き付ける事だ…)
無論、自らの全力をぶつけジークフラムに挑みたいという気持ちはある。そのために聖王国軍に加わる事を決めたのだから。しかし、今はあくまで仲間たちのために戦う。それが彼の決意。
(俺がこいつを引き付けりゃあ…リヒターの大将がなんとかしてくれる)
そう信じていた。




