中盤戦27
場面は戻り、聖王国軍と帝国軍の戦場――ヘルムート・リヒターおよびズメイ・バルトシークに対するは、特務竜兵隊隊長ジークフラム・ガイセ。
「あァ!?てめえ…ズメイか!」
「久しぶりだな…親分」
ズメイはむしろ決別の意味を込め、かつての上官を親分と呼んだ。ジークフラムもまた、ズメイの意図を察する。目の前の男は…かつての部下は、自分を倒すために来たのだと。
そしてその事実に対し、別段不快感などは抱かなかった。強い者がトップに立つ、下剋上上等部隊。それがジークフラムの作り上げた特務竜兵隊の掟だったからだ。ならば、ズメイが敵に回ったとして何を憤る事があるだろう。しかし同時にジークフラムはこうも思う。
「俺に挑む気なら…全力でブッ潰すぜ!ズメイよォ!」
ズメイが自分の敵に回った事に対して怒りは感じない…だが、かと言って手心を加える気もさらさらない。かつての仲間だろうと関係はなかった。ただただ、持てる力を使い全力で叩き潰すのみ。
「ああ、あんたならそう来るだろうってのは分かったてたさ!――竜兵分隊、前へ!」
ズメイが声を張り上げる。と同時に、後方に控えていた竜兵分隊が姿を現した。その数、五頭。身を低くし、体に布を纏って偽装していたため突如竜が現われたように錯覚した兵もいただろう。
「目標、ジークフラム・ガイセ!突っ込むぞ!」
竜兵分隊に号令を下すズメイ。動き出す竜。それを視認すると同時に、帝国軍・特務竜兵隊副長マルガレーテ・セファロニアも命令を発していた。
「私達も出ましょう!特務竜兵隊、大型竜――前へ!」
ジークフラムの竜を除く九頭の帝国所属大型竜も動き出した。
彼らは意識する事はなかったが、これは歴史的な瞬間だった。竜兵と竜兵の戦闘は長き戦乱の歴史においても、初めての出来事であったからだ。




