中盤戦9
「総司令官カムラン殿から伝令!今こちらに迫りつつある敵軍についてはエレオノール軍に一任する、との事です!」
「承知した!」
エレオノールは伝令の言葉に了解の旨を返す。元々、エルヴィン率いる中央第二軍はエレオノール軍が引き受ける予定だった。つまり、当初の予定通りという事だ。
とはいえ、約6万の敵に対してエレオノール軍は3万5千。楽な戦いではない。
(しかし、私達の役割はあくまで敵を引き付ける事…勝利が目的ではない)
結局の所、この戦いの焦点はカムランとヴォルフラム、果たしてどちらが勝つのか――どちらが討たれ、どちらが生き残るのか。その一点に集約されると言って良い。エレオノール軍の役割はカムランがヴォルフラムまで辿り着くための障害…エルヴィン軍を引き付け、足止めする事だ。
(もっとも、足止めさえすればいいなどという軽い心構えでどうにかなる相手ではない。倒すつもりで…命を賭けるつもりで戦わなければ)
「エレオノール軍に告ぐ!前方の敵に突撃を仕掛ける!騎馬隊は総員抜刀、突撃準備――!」
「突撃準備!」
エレオノール配下の騎馬部隊長、ホフマンを始め各指揮官、兵士たちが命令を復唱する。
「行くよ、ツバキ」
「うん」
エレオノールと椿は一度視線を交錯させ――その後に、二人同時に敵陣へ鋭い視線を向ける。
「――突撃!」
エレオノールの号令により、エルヴィン率いる帝国中央第二軍へ騎馬隊の突撃が開始された。




