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中盤戦6
聖王国軍中央第二軍、騎馬隊。
(左翼のオスカーさんや右翼のミュルグレスさんはどうなっているんだろう…)
椿はエレオノールの横を騎馬で駆けつつ、戦場全体の様子に思いを馳せる。
現在、敵陣奥深くを目指して駆けている騎馬隊の中にいる椿には、左翼や右翼の情報は入って来ない。あの二人の率いる軍がそうそう劣勢に立つ事はないと信じてはいるが…やはり気にかかるものは気にかかる。
(戦場解析を使うべきだろうか…?)
戦場解析を使用すれば、俯瞰した視点から戦場を眺める事ができる。当初は椿の周囲数百m程度しか視認できなかった能力だが、何度か使用した影響か現在は周囲数km程度の地形を俯瞰して見る事ができる。これを使えばひとまず全体の状況を把握できるだろう。
(いや、駄目だ…)
戦場解析は一日に一度しか使用できないという制約がある。ここぞという時に使わなければ効果は薄い。そして今はその時ではない。
(今はただ右翼と左翼の両軍を信じて進むんだ…!)
少年は前方に視線を向けた。そこにはエルヴィン率いる帝国軍精鋭部隊が待ち構えている――。




