中盤戦5
オスカー率いる聖王国軍左翼と激戦を繰り広げるは、バウテン率いる帝国軍右翼。
「我が軍の前線部隊、一度は聖王国軍に押されかけましたが現在は敵の攻撃を受け止めています!現在、状況は五分…いえ、我が軍がやや押し始めています!」
「よし…!」
バウテンは伝令兵からの報告にぐっと掌を握りしめる。彼は自身の能力についてよく理解していた。自分は指揮官としてオスカー・グロスモントに劣る存在である…と。しかしながら現状はこちらがやや有利。バウテンにしてみれば喜ぶべき状況だった。
しかし、彼はそれが自分の手柄だとは思わない。全ては自分の配下の指揮官および兵達の頑張りのおかげだと理解している。
北統王国は風前の灯火と言って良い。この戦いで負ければ聖王国軍が首都を占領するだろうし、例え勝ってもいずれ帝国軍が理由をつけて北統王国の支配権を奪いとって来るだろう。バウテン配下の北統王国兵たちにとって、絶望的な状況だ。しかしそんな中にあって――否、そんな状況だからこそ北統王国兵としての誇りを胸に戦う彼らに対し、バウテンは畏敬の念を抱かざるを得ない。
もっとも、そんな風に配下の兵に対し慈しみと尊敬の気持ちを持てるバウテンだからこそ兵も彼に付いてきているのだが。
「前線で戦う指揮官と兵達の奮戦、心より感謝する。と同時に、決して油断せぬよう。――前線にそう伝えてくれんか」
「はっ…!」
「それと、何か異常があればすぐにわしの所まで知らせてくれ」
「承知しました!」
バウテンの下知を受け、伝令兵は前線へと駆け戻っていく。
「状況はいいみたいですね、バウテン上将軍」
バウテンの横で伝令兵の背中を見送りながら、エッカルトがそう声をかけた。
「うむ。じゃが、油断はできん…。敵は勇壮の聖騎士…必ず、もう一波乱ある…」




