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中盤戦4

 ミュルグレス率いる聖王国軍右翼と対峙している帝国軍左翼――。


「シャルンホスト上将軍(ハイ・ジェネラル)…なぜ、戦わない…?」


 帝国軍左翼軍団長、フェルマー・シャルンホストにそう問いかけたのはザシャ・ハヌス。顔の下半分をマフラーで隠した青年。軍人にしては細身な体型が特徴的で、戦場だと言うにも関わらず甲冑でも騎士服(サーコート)でもなくただのローブを身に纏っている。


「んー…(わたくし)としても戦いたいのですが…」


 シャルンホストは肩をすくめる。


「敵の指揮官、ミュルグレス・レイの布陣があまりにも見事なもので。手を出せずにいるんですよ」


 彼の言葉の通り、目の前に展開されたミュルグレスの布陣からは一部の隙も見いだせなかった。


「しかし、それは向こうも同じ事…僭越ながら、(わたくし)の構築したこの布陣に対して容易く手を出す事はできないでしょう。つまり、互いに動けない状況という訳で。ここで焦って攻めかけては、崩れるのはこちらですよ」


 事実、そうであるらしい。それ故にシャルンホスト、ミュルグレスの両軍は先ほどから睨み合いを続け一戦も交えていない。


 戦いにおいて、『先に手を出した方が負ける』という状況は往々にして起こりうる。そして今がそうである…シャルンホストはそう言っているのだった。ザシャとてヴォルフラム配下の『大十字グランクロワ』のひとり。その理屈は分かる。それ故に、


「…そうか」


 と頷いて見せたザシャ。しかし、シャルンホストの言葉を鵜吞みにした訳ではない。エルヴィンをして『何を考えているか分からない』と言わしめる男だ。


 不気味で、不愉快な人物――それがザシャのシャルンホストに対する印象だった。だが同時に、聖騎士序列第二位ミュルグレス・レイと互角に渡り合えるのはヴォルフラム、エルヴィン以外ではシャルンホスト以外いないのもまた事実。


 その言動に不信感を抱かざるを得ないが、こちらが負けている訳ではない。睨み合いという事は、現状は五分と五分――。


(…しばらく様子を見るか)


 ザシャはそう決め、シャルンホストに対する殺意を静かに胸に押し留めた。

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