中盤戦2
エレオノール率いる中央第二軍騎馬隊とカムラン率いる中央第一軍騎馬隊が一丸となり、カイとエマが穿った敵重装歩兵の穴を駆け抜けていく。
「ネヴィル卿が開けた敵戦線の穴、塞がせるな!」
そう命令を下すのはカムラン配下の重装歩兵部隊長、サグラモール。
「サグラモール――ありがとう、君のおかげで僕らは障害なく敵と戦える!」
騎馬で通り過ぎる寸前、カムランが告げた。
「なぁに、私は何もしておりません!礼ならネヴィル卿に!」
「ああ!」
そんな短いやり取りを交わし、カムランと彼の率いる騎馬隊は駆けていく。その先を進むのはエレオノール隊第二軍騎馬隊。彼女たちの役目はカムランがヴォルフラムの元へ辿り着くまでの露払いであるため、現在は第一軍に先行する形だ。
その先頭を進むエレオノールと椿が、カイ率いる聖王国重装歩兵部隊のいる場所に差し掛かった。
「カイさん!」
エレオノールの隣で駆けつつ、少年は重装歩兵部隊長の名を呼んだ。
「ありがとうございます!」
「ツバキか!――生き残れよ!そして…後でオレの頭を撫でろ…いいな!」
「…はい!」
ツバキとカイもまた短いやり取りを交わす。そして、
「エマ!…まだ戦いは中盤だ。気を付けてくれ。どうか…無事で」
「エレオノール隊長!隊長こそお気を付けくださいっす!絶対、また無事な姿で会いましょうっす!」
「うん。…ありがとう」
エレオノールとエマもそんなやり取りを行った。しかし、互いに感傷に浸っている暇はない。エレオノール達は騎馬の勢いを落とさず、敵軍へ向かって駆け抜けていく。
その後ろ姿を見送りながら、カイが傍らの少女に言った。
「さて…もうひと暴れするぞエマ・リッツ。戦いが終わった後でツバキに撫でてもらわないといけないからな」
「了解っす!自分もエレオノール隊長にいっぱい褒めてもらわないといけないっすからね!」
エレオノール・フォン・アンスバッハ配下の重装歩兵部隊長と弓兵部隊長。二人の副長は闘志に燃える互いの視線を交わした。




