ツバキvsフィレル3
カイ指揮下の東軍防御部隊もまた、西軍攻撃部隊と激突しようとしていた。
攻撃部隊の先頭を進むマルセルとルボルのホイサー兄弟。彼らの狙いは、旗そのものではなく防御部隊の壊滅だ。旗は、その後確実に奪えばいい。騎兵達の武器は馬上槍、ホイサー兄弟のみ戰斧を使用している。もちろん、模擬戦闘用に刃は潰してあった。それでも斧は斧。叩きつけた際の威力はとてつもないものとなる。
「そりゃああああ!」
マルセルが斧を横薙ぎに払う。東軍騎士の鎧に直撃した。
「がはあっ!」
板金鎧が軋むほどの衝撃。騎士は弾き飛ばされ、しばし宙を舞う。そして重力へ引かれ無慈悲に地面へと落ちる。
「ごふっ…」
と息を吐き出した後、動かなくなった。まさか死んだという事はないだろうが、意識を失ってしまったのかもしれない。
その他の兵も、馬上槍で東軍防御部隊を突き崩しにかかる。ホイサー兄弟を先頭に、まるでひとつの塊であるかのような騎兵集団が東軍防御部隊を貫いた。
((手応えあり))
マルセルはほくそ笑んだ。見事といっていい騎馬突撃の成功。おそらく敵陣は壊滅したはず…そう思い、たった蹴散らしてきた東軍防御部隊へ振り向いた。
「む?」
しかし、地面に転がっていた東軍防御部隊の兵は…わずか2名。未だ、5名の防御部隊が健在だった。
「兄者!あいつが!」
ルボルがカイを指差す。そこには…こちらを睨むカイの姿。
「あいつが盾になって俺の攻撃を防ぎおった!」
東軍防御部隊の攻撃、その殆どはカイが壁となり阻んでいたという事らしい。
「面白い」
マルセルは再び笑みを浮かべる。
「ならば、何度でも突撃し突き崩すだけよ」




