開戦11
「よし、敵の勢いは削いだ!このまま踏ん張り続けろ!敵を消耗させろォ!」
重装歩兵部隊、ロナルドが吠える。
「おお!」
「ここは抜かせねえ!」
兵達もまたロナルドの声に応え、よりいっそう足腰に力を込めた。しかし、その時…騎馬に跨った聖王国軍指揮官がひとり、ロナルドの眼前に颯爽と姿を現す。エレオノール・フォン・アンスバッハの動きを疾風とするならば、今現れた騎馬は清涼なる流水。嫋やかで、静かで…そして、どのような状況にも応じ的確に姿を変える。
聖騎士序列第五位、イゾルデ・ファストルフだった。
「ごめんなさい……あなたに恨みはないけれど……」
部隊長、ロナルド目掛け駆けていくイゾルデ。
「部隊長を守れ!」
ロナルドの周囲の兵達がイゾルデに向けて一斉に槍を向けた。だが、
「突っ込めい!」
横合いから猛牛の如き勢いで突入してきた別の騎士。巨岩のような肉体を持つ彼の名はブルーノ。オスカー配下の中でもガレスに次ぐ武闘派だ。そのブルーノに引き連れられた騎士達が重装歩兵部隊に突入する。
「ぐうう…!」
重装歩兵達はそちらに槍を向けて何とか踏ん張るも、その代償としてロナルドの周囲に隙が出来る。
「ファストルフ卿!今ですぞ!」
「ええ……」
静かに頷き、イゾルデはロナルドに迫る。
「舐めるな!俺とて北統王国の…」
イゾルデに槍を向け啖呵を切ったロナルドだったが、彼がそれを言い終える事はできなかった。水とは時に静かに…そして時に激しく流れを変えるもの。イゾルデがロナルドに向けた繰り出したのは、濁流の如き強烈な刺突だった。




