開戦6
聖王国軍中央第二軍、エレオノール指揮下…軽装歩兵部隊。部隊長であるリヒターは、配下の竜兵分隊長に声をかけた。
「どうだい、ズメイの旦那。敵竜兵の気配は感じるかい?」
「ええ、竜たちの様子を見る限り…敵に竜兵がいるのは間違いないですね」
答えつつ、ズメイは彼の横を進む竜へ視線を向ける。
現在、竜兵分隊に所属する竜たちはその体に大きな布をかけてその姿を敵に知られないよう偽装されている。こうすれば、遠くから見れば投石器でも運んでいるようにしか見えない。
「ただ、具体的に敵のどこにいるかまでは…はっきりとは分かりやせん。どうも、竜の体に何か塗って匂いを偽装してるみたいで」
「そうか。敵も馬鹿じゃないって訳だな」
「はい。隊長のジークフラム・ガイセはともかく…副官は頭の回る人物ですから」
「ああ、そうだったな。ヌガザ城砦でも敵の副官の機転でジークフラムには逃げられたって話だしな…」
と答えつつ、リヒターは短く答え腰の剣に手を添えた。この剣はかつてユンカースが使っていたものだ。
ジークフラムは、かつてリヒターが隊長を仰いだユンカースの仇である。だが、リヒターその事実をことさら口に出したりはしない。いつも通り気だるげな表情を浮かべるのみだ。
だが、彼の後ろを進むズメイ・バルトシークにははっきりと分かった。目の前の歩兵分隊長の胸には、かつてない程の闘志が宿っている事を。




