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決戦前 エレオノール隊5

 椿の手を握るハティの様子に、エレオノールがふっと微笑んだ。しかし次には指揮官の表情に戻り、凛とした声で告げた。


「今回の相手は大将軍フィシュタル・ジェネラル、さらに激戦区である中央の担当。今まで以上に厳しい戦いが予想される。けれど、私は信じている。聖騎士(パラディン)ならば…そして、この場にいる(みな)ならば大将軍フィシュタル・ジェネラルの不敗伝説に穴を穿つ事が出来ると」


 エマ、カイ、ホフマン、リヒター、ズメイ、ハティ、そして椿…この場にいる全員の顔を見回し、エレオノールは言葉を続けた。


「それでも苦境に立たされてしまう事もあるかもしれない。けれど、約束して欲しい。絶対に諦めないと。勝利の先にある平和を、そして何より…自らの生存を」


 エレオノール・フォン・アンスバッハという人物の中には矛盾した願いがある。ひとつは、戦いに勝って平和な世をもたらしたいという想い。そしてもうひとつは、この隊の誰にも死んで欲しくはないという想い。もし勝利のみを望むのならば部下を駒として扱った方が時には勝ちへと近付けるだろう。もし部下を死なせたくないのならば、彼らを戦いに駆り出さなければいい。


 しかし、彼女はどちらかひとつを選び取る事はできなかった。平和な未来を作り、部下たちも可能な限り死なせない…それがエレオノールの選んだ道だ。それは理想主義かもしれないが、その理想を手にするための努力を彼女は重ねて来た。


 休む時間を惜しんで隊の誰よりも働き、戦場では危険に身を晒しながら戦い続けた。そんな彼女を知っているからこそ、エレオノールの言葉はこの場の人間の胸を打った。


「もちろんっす!平和な世の中になって…エレオノール隊長やツバキっちとのんびりしたり美味しいもん食べたりしたいっすからね!だから絶対に平和な世界にしたいし、絶対に死ねないっす!」


 そんなエマの言葉にカイも頷く。


「そうだな。オレも平和な世が来るまで生き延びてツバキを思う存分()でたい。撫でたり、匂いを嗅いだり…」


「…今、なんか変な事言わなかったか?」


 ハティがカイの顔を覗き込む。


「気のせいだ」

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