決戦前 エレオノール隊3
「ん…そういえば大十字についてきちんと説明していなかったね」
隊長であるエレオノールがハティの質問に応じた。
「大十字というのは栄賞の名前なんだ。ひいては、それを授与された軍人をも指すね」
「栄賞…ってなんだっけ?」
ハティが隣に立つ椿の裾をくいっと引いた。
「勲章の一種だよ。国が与える勲章が『国家勲章』。将軍以上の指揮官が部下に与える事の出来る勲章が『栄賞』――前回の戦いでハティがオスカーさんにもらった勲章も栄賞だよ」
「ああ、あれか…」
と、ハティはオスカーから授与された栄賞を思い出す。
「そう、その栄賞の中でもヴォルフラム大将軍が与える特別な勲章が大十字という訳さ。この勲章を授与された者は、世界最高の軍人大将軍に認められたという事…。その重みは、下手な国家勲章などとは比べ物にならない」
「なるほど…なんかよく分かんないけど…凄そう…」
実際にその重みが分かっているのかいないのか、ハティはふむう…と腕を組んで悩む仕草を見せた。
「そんなに凄い奴ら、ボクでも何人倒せるか分かんないな…」
「おいおい、倒すつもりなのかよ…流石と言うか、随分な自信だな」
ハティの言葉にリヒターは肩をすくめる。
「まあね…本当なら大将軍もボクが倒したいんだけど」
「ハ、ハティちゃん、それは…」
エマがハティの無謀を諫めようとするが、少女は『分かっている』とばかりに首を張った。
「ボクは主をしっかり守らないといけないから…大将軍は、カムランとかいう奴に譲ってあげるよ」




