表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/1118

参戦

「ほほう、これは面白い事になってきましたねえ」


 シャルンホストはその顔に浮かぶ笑みをいっそう強めた。


「甲冑や武器など必要な物があればお申し出ください」


 カイが模擬戦闘トーナメントに参加する…というのが決定事項であるかのように話を進めるシャルンホスト。椿は慌てて言葉を挟む。


「ちょ、ちょっと待ってください…!カイさんはまだ参加するとは言ってないですよ。そ、そうですよね、カイさん!?」


「いや、オレは申し出を受けるつもりだ。戦いを挑まれたのならば逃げる訳にはいかないだろう」


「いや、でも、それは…」


「いいではないですか、ツバキ殿」


 シャルンホストがツバキの肩をポンと叩く。


「これもまた、帝国と聖王国の友好の証という事で」


「でも…」


 椿は、フィレルに視線を落とす。そして解析アナリティクスを発動した。


 指揮90 武力93 知謀74  政策55

 兵科特性:重装歩兵C 軽装歩兵D 騎馬隊A 弓隊E


(カイさんの能力値ステータスは指揮92 武力91 知謀85  政策74…これだけ見れば互角に渡り合えるはずだけど…)


 模擬戦闘トーナメントはその性質上、攻撃部隊オフェンス防御部隊ディフェンス、それぞれの指揮官が必要だった。カイ一人が優秀でも勝つ事はできない。


(それに、カイさんは騎馬隊の兵科特性は「B」、フィレル将軍は「A」)


 この点においても、騎馬を用いる模擬戦闘トーナメントにおいてフィレルが有利なのは明らかだった。カイが負ける公算は高い。そしてカイが公衆の面前で負ければ、聖王国軍は帝国軍に侮られて…今行っている交渉も不利になってしまう可能性がある。いや、それは考えすぎだとしても、この戦いがこちらにとって得になる可能性は極めて低かった。


 やはり戦いを止めなければならない。


「やっぱりこの申し出を受けるのはやめましょう、カイさん。僕たちがここに来た目的はこんな事をするためじゃないんだから…」


「では、こういうのはどうでしょう」


 ヒューゴ大将軍フィシュタル・ジェネラルが口を開いた。ひょっとしたら助け舟を出してくれるのかもしれない。一瞬そんな期待を抱いた椿だったが、大将軍フィシュタル・ジェネラルが切り出したのは意外な提案だった。


「私の権限でどうにかできる捕虜が十名程います。あなた方が模擬戦闘トーナメントで勝利したならば…その十名を聖王国にお返ししましょう」


「え…捕虜を…?」


「はい。もちろん、捕虜返還のための身代金はいただきません」


「ちょ、ちょっといいっすか?」


 エマが会話に加わった。


「その捕虜って、どんな方達がいるんっすか?」


「そうですね。カペルマン男爵フライヘル、ペサール子爵ヴィコント、モリゾー子爵ヴィコント…」


「ま、まじっすか?」


 エマは、椿を抱き寄せ耳に口を近付けて、


「みんな門閥に関係ある貴族っす。本来なら身代金で金貨何千枚も払わないと返して貰えないような人達ばっかりっすよ」


 と囁いた。


 もしそれが事実だとしたら…模擬戦闘トーナメントに勝つだけで、金貨何万枚という利益を聖王国にもたらす事になる。ちょっとした戦争に勝利する以上の利益だ。


「ヒューゴさん…本当ですか?」


「はい。大将軍フィシュタル・ジェネラルの名に誓って、嘘は申しません。必要とあらば文書にしたためましょう」


「…分かりました」


 椿は意を決した。こうなっては他に選択の余地はないだろう。


模擬戦闘トーナメントの申し出、お受けします。…その代わり、僕も参加させてください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ